再生医療支援機構

耳鼻咽喉科分野

「鼓膜再生」

大阪赤十字病院・耳鼻咽喉科
白馬伸洋 先生

現在、日本では10人に1人は音が聴こえにくい難聴者の方で、その内60万人は補聴器をつけて生活をしている人です。難聴者の中には事故や中耳炎の後遺症で鼓膜に穴が開いてしまって音が聴こえにくくなっている方も多くさんおられます。穴が小さいと自然に閉じることもありますが、穴が大きくなると、手術をしないと閉じない方も多くさんいます。

今までの手術の方法では、鼓膜の穴を閉じるために耳の後ろの皮膚を切り、筋肉の膜を採取して、それを使って鼓膜の穴を塞ぎます。でも患者様の中には耳が聞こえるようになりたいけれども、耳の後ろを切ったり、筋肉の膜を採取されたりすることが怖くて手術を諦めてしまう人もいます。

羊膜は「羊の膜」と漢字で書きますが、本当は妊娠中にお母さんのおなかの中で赤ちゃんを包みながら赤ちゃんを守っている膜です。薄くて弾力性があり、他人に移植しても拒絶反応が起こりにくい膜ですが、 その薄さと柔軟性はとても鼓膜に似ています。

私どもは、鼓膜に穴が開いている人の治療に羊膜を用いる方法を開発することができました。穴の開いている部分に羊膜を挿入することで、羊膜を構成する成分が鼓膜再生を促しますので、今までのように耳の後ろを切開する必要がなく、また筋肉の膜も採取する必要もありません。手術中の痛みや手術へ対する抵抗感が少なくなり、とても患者様に喜ばれるようになりました。

皆さんも、明日、病気や事故で鼓膜に穴が開き、音が聞こえなくなる可能性を同じ様に持っています。 今後、この羊膜を使った鼓膜の穴を閉じる方法が広く普及することにより、少ない負担でより多くの難聴の方の治療ができるようになれば、たくさんの人がコミュニケーションや音楽などを楽しめる豊かな社会の実現が可能と考えられます。

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