羊膜の不思議

羊膜組織移植

瞼球癒着(眼球とまぶたの癒着)を伴い角膜混濁をきたす疾患には、Stevens-Johnson症候群、眼類天疱瘡、再発翼状片などがあり、いずれも視機能を回復するためには手術を必要とします。

しかしこれらの疾患は手術後に再癒着をきたしやすく、角膜の再混濁をきたしやすいため、手術予後は必ずしも良好ではありません。このためこれらは、種々の角膜疾患のなかでも難治性疾患として扱われております。

瞼球癒着をきたすこれらの疾患の共通点として、
1)角膜上皮幹細胞の部分的あるいは全欠損がある、
2)眼表面の面積が縮小している、
3)手術後に再癒着をきたしやすい
ことがあげられ、手術後の再癒着が角膜混濁を招く要因となります。この再癒着の機序については未だ解明されておりません。

再癒着の防止のためには種々の方法が用いられており、具体的には、自家結膜移植、術後MMC点眼、手術中MMC塗布といった方法があります。

このうち、自家結膜移植は再発翼状片には有用であるが、Stevens-Johnson症候群と眼類天疱瘡では自己の結膜すべてが異常上皮であり、適応対象にはなりません。また、結膜を切除した健常部分が瘢痕化するというデメリットがあります。
術後のMMC点眼は晩発性に強膜融解をきたすリスクがあり、あまり用いられておりません。
手術中MMC塗布は約10年前より国内外で用いられ、比較的安全な方法でありますが、癒着を100%防止することはできません。

このように再癒着を防止する有効かつ確実な方法がない中で、羊膜移植は癒着防止効果を有し、かつ眼表面を良好に再建する方法として広く用いられるようになってきております。

手術において混濁した異常上皮を切除すると広範囲な上皮欠損部ができますが、羊膜移植は上皮欠損の面積に関わらず、これを被覆することができます。羊膜の上には再生上皮がスムースに伸展するため、癒着が生じにくいのです。
上述した手術中MMC塗布と羊膜移植を併用することで、これまで予後不良であったStevens-Johnson症候群、眼類天疱瘡、再発翼状片の手術予後が改善しました。

羊膜と同等の効果を有する他の組織あるいは物質はなく、難治性眼表面疾患の手術治療に羊膜移植は必須となっており、これは国内外の角膜専門医が広く認めるところであります。

京都府立医科大学眼科学教室講師
外園 千恵 先生

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